浄泉爺のブログ

浄泉爺の考え事を記録します(研究のこと、仏教のこと、教育のこと、ドローンとか)

阿弥陀経CODED

 

 先日、阿弥陀経CODEDなるものを公開した。というか、工作して自己満足している。

 

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これはなにかというと、発泡スチロール製の棒(実は中に空洞がある。スチロールカバーというもので、水道管のようなものの保温用のカバーのようだ。近所のホームセンターで数百円で購入した。)に、LEDテープライトを巻き付け、そのLEDテープライトをRaspberry Piでコントロールしているものだ。LEDテープライトは以下のものを4本繋げた。 

 結果として20mのLEDテープライト、1200個のLEDが発泡スチロールの棒に巻き付いている。

 

実は、Raspberry Piを用いた教材開発のような事を考えており、その一例として何か作ろうと思った次第だ。僕の場合、大抵目的があってその具体例は後から考えるタイプ。

 

今回の製作プロセスは以下の通り

 

友人から、Arduinoを用いてLEDの制御をしている事を聞いたので、それをまずは自分でやろうと考えた。Arduinoはもっていなかったが、Raspberry Piでも直ぐにできそうだったので友人に勧められた上記のLEDテープライトを1本購入した。その上で、それがRaspberry Piでコントロールできることを確認した。以下のページを参考にした。とうか、その通りやればできた。大変ありがたい。

 

tutorials-raspberrypi.com

(上のリンクは 2021/08/31 追加。この中の、3,4のステップが必要なようだ。以前これを書いた時には、それはせずにすんだのだが、恐らく他のセンサー等で遊んだときに同様のステップを踏んだのだろう。サウンド関係をオフにするようだ。ラズパイのアップデート等でその部分がリセットされていたらしく、動かなくなっていた。)

 

www.thegeekpub.com

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その後、ではこれで何をやるかとなる。円筒に巻き付けようというのは、LEDテープライトの存在を知ったときに直ぐに思った事だったので、それをやってみる。近所のホームセンターで適当な円筒を購入。それが先の発泡スチロールの棒だ。巻き付けてみると、5mでは大した高さにならない為、少し悩むが、買い足して繋げば良いでは無いかと考える。そこで、後3本のLEDテープライトを追加購入し、それらを繋げた。次のページを参考にした

www.peace-corp.co.jp

本来、ハンダで繋げるべきだが、ハンダ付けが苦手である為、今はリード線をそのまま繋げている。その為、途中LEDが約一個分飛ぶ部分があり、それは今後改善したい。

 

その結果、まずはLED1200個からなるLEDテープライト巻き付けタワーが完成した。

 

まぁ、LEDテープライトを巻き付けただけの代物だが、LED1200個からなる情報表示装置である。何を表示するか。

 

阿弥陀経CODED

 

適当に作成したものだが、結構面白い性質がある。そもそも巻き付けているので、おおよそ14個先のLEDが直ぐ上にくるようになっている。この性質をうまく使えば、面白い模様を円筒上に自動発生できる事に最近気が付いた。それについては、後でのべる。

 

ある程度面白い事をしたかったので、僕が坊主であることを加味して、お経をこのタワーに表示しようという事を考えた。丁度、別案件(アプリ製作)で、仏説阿弥陀経のテキストファイルをもっていたため、これを使えば良いと考えた。つまり、仏説阿弥陀経というお経の漢字一文字一文字のUnicodeコードポイントをバイナリ表示し、それをLEDのオンオフで表現すれば面白いのでは無いかと考えた。当時は、UnicodeコードポイントとUTF8の関係がよくわかっていなかったが、今回の件で色々と勉強になった。

 

さて、阿弥陀経のテキストファイルを読み込み、それを01のバイナリに変換した上で、LEDのオンオフをそのバイナリに従って制御するプログラムをPythonで書き、実行したものが先のTweetだ。お経の漢字一文字が16bit、つまり16桁の01の数値になっているので、元々も阿弥陀経の漢字数の16倍の01の個数となっている。それを、順に送り出してLEDを光らせているので、阿弥陀経全てを表示し終わるにはかなりの時間がかかる。同じ模様がただぐるぐる回っていると思っておられる方が多かったので、次のTweetをした。

 

 

こちらは色をシックなものにした。実は全て白色で出そうとしているのだが、LEDテープライトの終端付近では電圧が足らないせいと思われるが色合いが変化してしまう。ただ、これはこれで美しいので気に入っている。

 

考察

さて、これをどう見るか。今手元にお経本があり、その中に仏説阿弥陀経というお経があるが、それは約2500年前に釈迦が釈迦が使っていた言語によって発声されたものが、口伝によって伝えられ、後の弟子が現地の言語で書いたものが、様々な言語に翻訳されながら、最終的に漢字で書かれたバージョンが手元にあるわけだ。コンピュータで文字を扱うために、それら漢字一つ一つには数値が対応づけられている。このように、コンピュータ内では文字は数値で管理されているわけだが、その対応表は近年人間が考えたものだ。その対応表の番号を2進数で表現し、それをLEDのオンオフにして表現している。

 

一つ一つのLEDオンオフには意味は無い。これは、釈迦の発声した言葉の一音一音には意味が無いのと同様だ。それらが連なることで意味をもつが、その連なりは言語の定義であって、ある種のコード表である。その連なった音が言語として解釈され、我々の脳内で処理され、理解される事で本当に意味を持つのだろう。その意味が認識されるのは脳の働きだが、その脳内の電流の流れはまた違ったルールによってコード化されている。

 

そう思うと、このLEDのオンオフの点滅は、阿弥陀経の異なる表現であることは間違いなく、ただ我々がこの点滅パターンから意味を見いだせないだけなのだ。それは、漢字で書かれたお経をただ音読し、意味がわからないと言っている状態と大してかわらず、そもそも意味とは何であるかを考えるのに良い題材では無いかと思うのだ。

 

この光の点滅パターンは、そのパターンから数値をつくり、コード表によって漢字に置き換えることで阿弥陀経の漢字バージョンを再生する。阿弥陀経の意味を理解し、それが脳内にコード化されている状態はどういったシナプスのオンオフパターンなのであろうか。それを他の人が見ることができたとしても、このタワーのようになんだか綺麗だという程度なのだろう。

 

意味とは何か、理解したとはどういう状況であろうか。僕はこのタワーの点滅を見続けることで、阿弥陀経が表現している極楽浄土の世界観が見えてくるのでは無いかと妄想する。僕の脳は、このコードを読み解けるだろうか。

 

そのコードをコンピュータに読ませるという事もした。これも結構面白いw

 

 

その後

さて、このタワー、他にも色々遊べそうだ。LEDテープライトはオンオフ素子の1次元配列なので、1次元セルオートマトンの時間発展をこの上に表示すれな面白いだろうとおもった。1次元オートマトンと言えば、ウルフラムである。Elementary cellular automaton は以下の通り。256種類のルールがあるが、その番号付けは Wolfram code と呼ばれる。

en.wikipedia.org

1200個のセルから成るセルオートマトンを時間発展させれば良いと安易に思って居たが、それでは空間的なパターンは見えない。パターンを見るには、時間的な発展の「歴史」を見る必要がある。先のWikipediaの中にある図も、時間経過を見せたもので、それが模様として見えるのだ。これは、貝殻の模様もそうなっている。貝殻の成長する縁で生成される模様が後に残されたものが貝殻の模様である。Wikipediaのなかでは、Rule30にその事が書いてある。また、貝殻の話は以下の本が有名である。

 

The Algorithmic Beauty of Sea Shells (The Virtual Laboratory)

The Algorithmic Beauty of Sea Shells (The Virtual Laboratory)

  • 作者:Meinhardt, Hans
  • 発売日: 2012/03/14
  • メディア: ペーパーバック
 

著者のマインハルト氏は残念ながら数年前に亡くなったが、来日された際にサインを頂いた本を所有している。写真があったので載せておこう。少し自慢だ。この本は研究者以外の方に結構売れたそうだ。なにせ、貝殻の模様がある種の方程式の解であるというのだ。面白いに決まっている。

 

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さて、LEDテープライトタワーでセルオートマトンの時間発展の歴史を見るにはどうしたらよいのか。LEDテープライトを巻き付けたのだが、一段分登るのにLED14個というのが今回の作品である。であるから、14セルからなるセルオートマトンの時間発展を一段ずつ積み重ねれば良い事になる。結果次の様になった。

 

 

実は色々なルールを試したが、14セル程度で模様としてはっきり見えるはルール110くらいだった。全部を試したわけでは無いが。もう少し太いものにすれば良いのだろうが、LEDテープライトがさらに必要になるのでこれくらいにしておこう。

 

LEDテープライトを巻き付けたタワーの可能性を感じた。まだ色々なアート表現がありそうな気がする。もう少し遊んでみよう。

 

アートシンキング

ラズパイを使った工作等の情報は山のようにウェブ上にある。結局の所、真似をすればできる事は山のようにあり、何をするかのアイデアを出せるかどうかだ。また、全く新しいアイデアを出すにはどうしたらよいのか。最近、アートシンキングという言葉を聞いた。

 

www.huffingtonpost.jp

イノベーションということばが流行ったのは10年くらい前だろうか。iPhoneの登場の頃に盛んに言われたように思う。結局の所、新しいモノを作り出すのは変な人なのだろう。

 

僕が子供の頃には、ただそこに広場があって、さて何をしたら遊びになるのか?を考える必要があった。それは、小さなイノベーションが求められていたという事だ。自分のためのイノベーションである。大げさだが、そういう経験を子供の頃に多く持つことは創造性を生み出すためには重要だろう。

 

タワーは教材開発に関連して作成した。何か、これで何ができるのか、ここで何ができるのかを考え、そこで何かどうでも良いものを生み出すという体験をしまくる教育環境を作ってみたいと思う今日この頃だ。この挑戦自体が、そもそも何をしたら良いのかわからない、子供の頃の広場を前に呆然としつつも、わくわくしている状態である。これからが楽しみだ。