浄泉爺のブログ

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物語への反応について

最近はまったSF小説「三体」。

 

三体

三体

  • 作者:劉 慈欣
  • 発売日: 2019/07/04
  • メディア: ハードカバー
 

 自動車での移動時に聞くために Audible で購入したが、現在二度目を聞いている。大変面白い。ただ、二度目を聞きつつ、これは多くの人にとって面白いのか?と疑問に思いはじめたので、少しそういった事を書いてみようと思う。

 

「三体」は世界各地でベストセラーになったそうだ。私が「三体」を知ったのは、日経サイエンス2020年3月号の特集「三体」の科学であった。

 この特集を読んで、大変興味がわいたので Audible で購入した。ネタバレなどするつもりはないが、個人的にはかなりはまった。何故かを考えた上で、どうしてこれがベストセラーになり得たかが少し疑問に思えたため、そういった事を考えてみる。

 

まず、私がこの「三体」にはまった理由は単純で、私のバックグラウンドにほぼパーフェクトに合致するからである。まず、子供の頃の夢は宇宙に関係する研究者になることだった。天文物理的なことに興味があって、夜空を見るのが好きな少年だった。天体望遠鏡ももっていた。カールセーガンの「コスモス」は上下巻もっていて読んだ。テレビシリーズにもなって、それも全部見た覚えがある。

 

COSMOS上・下セット【全2巻セット】 (朝日選書)

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また、同じくカールセーガンの「コンタクト」も読んだ。これは所謂ファーストコンタクトもので、エイリアンとの遭遇を描く。

 

 こちらは映画になった。ジョディーフォスター主演で、こちらは原作とは結構違う印象だったように思う。

 

コンタクト 特別版 [DVD]

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  • 発売日: 2011/09/07
  • メディア: DVD
 

 

そういうこともあって、「三体」はやはり私のツボにはまっている。 

 

つづいて、コンピュータだ。「三体」の中には陣列コンピュータ(Audibleなので音で聴いているため、正確な漢字はよくわからない。人列かもしれない。)というものが登場する。コンピュータについては、ソフトウェアだけでなく、基本的なアーキテクチャから興味があった。所謂ハードウェア。何故こういったモノに興味をもったかというと、間違いなくNHK特集の電子立国日本の自叙伝に影響を受けた。これはビデオに録画して、数回見直した覚えがある。当時高校生だった。コンピュータに関係する研究に大変興味をもった事を覚えている。私の人生の方向性はこの番組の影響が大きい。

 

 

実は、比較的最近に上のDVDを購入して見直した。今見ても大変面白い。

 

続いて、「三体」のメインテーマである「三体問題」。こちらは数学・物理学の問題だ。所謂力学系の問題で、解析的な解が求まらないカオス系の話である。力学系は専門に近い為、これもドンピシャリである。後、相対論や量子論の話も出てくる。そちらも、元々興味をもっていた内容だ。

 

こういう風に、バックグラウンドにある、自分の興味に関する知識と、小説の内容が合致し、かつ突拍子ないが、ああこんなことも無い事もないかな?とか、ああ、こう来たかみたいなところに脳内麻薬が放出されるわけだ。面白い。

 

では、背景としてそういった興味や知識が無い場合、どう思えるのだろうかと少し考えた。

 

例えば陣列コンピュータ。コンピュータアーキテクチャをある程度知っている場合、ああ、原理的にはそうだよなとか、無茶だよこれとか楽しめるが、全くその知識を持ちあわせていない場合は、単なる手旗信号??みたいな感じではないのか?それは景色的面白さであって、知的面白さでは無い。他も同様な感じがするわけだ。

 

これは、例えば私が苦手とする所謂、純小説?については全く逆のこととなる。私にはそういった小説に出てくるであろう風景や歴史観、人間の感情的な風景のようなもの(想像で書いているが、実のところよく分からない)の知識や興味が無い。そもそもそういった小説をあまり読まない為、わからないが、恐らくベストセラーとなった小説を読んだところで、そういった感度をもった人が読んだときの感動や面白さは私は得られないのだろうと思うのだ。

 

そう思うと、「三体」については、個人的には大変マニアックな内容だと思うのだが、ベストセラーになれたということは、そういったマニアックな感じ方が無くとも面白いと感じられる要素があるんだろう。一部のマニアだけに受けるSFというのがあるのかどうかは実は知らないが(あってもおかしくないし、恐らくその方が書くのは簡単だろう)、一般にもある程度背景を知ったマニアにも受けるSF小説を書くというのはなかなか難しそうだ。

 

一方で、先の純小説についても、恐らく私が読んだとして一定の面白さは感じるのだろう。ただ、それは恐らく表面的で、本当の面白さは感じられないのかも知れない。

 

今、AmazonプライムAmazonオリジナルとして、スタートレック・ピカードというのをやっている。スタートレックも好きなシリーズで結構はまっているが、同じく背景が一致する。

 

いや、そう思うと、実は自分の背景となる興味がそもそもSF由来なのかも知れないが。